04 MISS YOU

 毎朝目を赤く腫らして出社する私に、先生は休みを取るべきだといった。
 私は首を振る。
 何かをしていないと、仕事に追われていないと、私はきっとどんどんだめになってしまう。
 朝から晩まで病院に入り浸って、永遠に目を覚まさないかもしれない彼の傍から離れない、ただの哀れな女に成り下がってしまう。

 そんなのは、彼だって望まないはずだ。

 私にしか出来ないことがある。
 そのために、今は目の前にある仕事を全て終わらせなければならなかった。
 新しい仕事もいくつか舞い込んだけれど、私はそれらを全て断った。

 先生は、私の考えていることをうすうす勘付いていたようで。
 数週間の後に私が白い封筒を差し出すと、「そんな気はしていた」と、寂しそうに笑った。

 『綾里法律事務所所長 綾里千尋』
 それが、明日から私が背負うことになる肩書き。

 同時に、この先一生『綾里千尋』を生きる覚悟でもあった。

 負けていられない。彼のいないこの寂しさに、負けてなんていられない。
 まだ何も終わってはいない。まだ始まったばかりだから。


 …まだ、涙は流せない。

 

 


3-1の時点ではもう千尋さん星影事務所にいないということで
ひとつ宜しくお願いいたします……

 

 

03<< >>05

03<< k*t >>05