20 幸せに、なれますように。


「…ち、千尋さん?」
「あら、なるほどくん」

「…春美ちゃん、ですね」
「そうよ」
「…あああ、良かった…!」
「もしかして、はみちゃんのこと探してたの?」
「はい。でも、まさか千尋さんを呼んでるとは思いませんでした」
「そうね、私も呼ばれるなんて思ってなかったわ…しかもこんな場所で」

「…神乃木さん、ですか」

「ええ」
「……」
「はみちゃんがおせっかいを焼くのは、真宵やなるほどくん相手だけじゃなかったみたい」
「真宵ちゃんが言ってました。春美ちゃん、千尋さんと神乃木さんのことを気にしてたみたいだって」
「困った子ね…でも、後でお礼を言っておいて」
「千尋さん?」
「あの子がいなければ、私、ずっと心残りを残したままだったかも知れない…元々、ちゃんと成仏はして

たけれど」
「……」
「…やっぱりダメね。意地張ってちゃ」
「それは、ぼくもそう思います」
「あら、まるで何か意地を張ってたみたいな言い方ね」
「ええ、まあ…今はもう、解決しましたけど」
「みたいね。今のなるほどくん、凄くいい顔してるもの」
「そ、そうですか?」
「ええ。昔の頼りない貴方とは別人みたい」


「…子供のほうがよっぽど自分の心に正直ね。駆け引きや建前や、そういう難しいことを一切考えないでいられるんだもの…今更ながら実感したわ」
「でも、それならこれから…」
「なるほどくん、私はもうこの世にいないのよ」
「…あ…」

「よく聞きなさい、なるほどくん」
「はい」

「心のままに生きるのが、きっと一番幸せになれる生き方よ」
「はい」
「私にはもうそれは叶わないから、せめて貴方はそうやって生きていきなさい」

「…はい」


「…じゃあ、もう行くわ。みんなによろしくね」
「千尋さん」
「なあに?」
「千尋さんは、幸せでしたか」

 


「ええ、勿論よ」

 

 


 

 

end.

 

 

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